アゲハチョウの羽化を楽しみに待っていたら、蛹から出てきたのは蝶ではなくうじ虫だった、という経験をされたことがあるかもしれません。
アゲハチョウの周りは天敵だらけですが、アゲハ愛好家が特に悩まされるのは寄生虫でしょう。
アゲハチョウの寄生虫。どんなのがいるのでしょうか。
そのすべてを挙げるのは難しいので、この記事では代表例を4つだけ挙げます。
併せて寄生虫対策も書きますので、どうぞ参考になさってください。
アゲハチョウの寄生虫
ここではハエ目1科とハチ目3科を挙げますが、そこに属する昆虫すべてがアゲハチョウに寄生するわけではありません。
宿主はいろいろです。
ヤドリバエ
多くのアゲハ愛好家が一番悩まされているのは、おそらくヤドリバエでしょう。
我が家でも毎年たくさん犠牲者が出ます。
わかりやすい名前ですね。

我が家で羽化した、おそらくマダラヤドリバエ。
1.3cm。
ヤドリバエに関してはこちらの記事をご覧ください。
ヤドリバエがアゲハチョウの蛹から出てくるところもご覧になれます。

コバチ
小型の寄生バチ。
アゲハに寄生するコバチでよく聞くのは、タマゴコバチ、アオムシコバチ、キアシブトコバチあたりか。
我が家で遭遇したのは、今のところタマゴコバチだけです。
タマゴコバチ。ご存じですか?
長野県農業関係試験場の農作物病害虫データベース にこう書いてありました。
昆虫のタマゴに寄生する小型のハチで、成虫になるまで卵の中で生活する内部寄生性である。キイロタマゴバチ、アワノメイガタマゴバチ、メアカタマゴバチ、ズイムシアカタマゴバチなどが知られている。いずれも成虫の体長が0.5~0.7mm程度、触角が大く翅が透明であるが内視ではほとんど確認できない。りん翅目(チョウ、ガ類)の卵に産卵するものが多い。寄生された卵は初めは外観上区別できないが、末期には黒く変色する。寄生してから10~14日間で卵に穴をあけて成虫が出てくる。
うちの卵から出てきたのはこれです。

全長1mm程度。
羽蟻に似ています。
アオスジアゲハの卵から出てきました。
タマゴコバチに寄生されたアゲハチョウの卵はどうなるのか。
こちらの記事でご覧ください。

コマユバチ
漢字で書くと小繭蜂。
名前のとおり、宿主から出てきて小さい繭を作ります。
いろいろいますが、我が家で遭遇したのはギンケハラボソコマユバチ。
これです。
最初にこれを見た時は仰天しました。
生きているアオスジアゲハ幼虫のおしり付近から糸が伸び、繭がぶら下がっています。
アゲハチョウの体内で孵化、外に出てくるなり、空中で繭を作るという離れ業。
モンシロチョウに寄生するアオムシコマユバチは、1匹の宿主から20~30匹出てきますが、これは1匹しか出てきません。
別の機会に繭作りを見ることができました。
ナミアゲハ3齢幼虫から出てきて、糸を吐きながら這行。
このあと、繭を作り始めます。
糸を輪っかにして、尻に引っ掛けました。

器用ですね。
このあと、うねうねしながら糸を紡いで、繭を編んでいきます。
2時間後。気がついたら、繭の形になっていました。

ずっと見ていたわけではありません。(笑)

翌日。カチカチに頑丈な繭になっていましたが、マクロレンズで覗いてみたら、中でまだ糸を吐いていました。
いったい、いつまで吐き続けるのか。
9日後、羽化しました。
ちゃんとおしりに針があります。
ギンケハラボソコマユバチが出てきた後のアゲハ幼虫はいずれも衰弱し、2~3日後に死にました。
ヒメバチ
体が細い、大小様々な寄生バチ。
ヒメバチは昆虫の中でも最大規模のグループを構成し、何万種もいるようです。
アゲハチョウに寄生するヒメバチで有名なのは、その名のとおりアゲハヒメバチ。
幸い我が家ではまだ遭遇していません。
なので、こちらの動画を拝借。
ヤドリバエやコマユバチと違って、成体になって出てくるんですね。

デカい。
こちらでは、幼虫に卵を産みつける様子を見ることができます。

こんな目には遭いたくないな。
寄生虫対策
以上、アゲハチョウに寄生する代表的な昆虫を挙げました。
これらの寄生虫からアゲハチョウを守るためにはどうしたらいいのか。
こちらの記事を参考になさってください。
ヤドリバエ対策ですが、他の寄生虫でもやることは同じです。

どこまでやるかは人それぞれですね。
この記事がお役に立てば幸いです。
アゲハチョウの幼虫に関する総括的な情報は、こちらの記事でご覧ください。
2021/4/11,2022/11/3
コメント
青虫が2cmくらいになると、10匹に1匹の割合で死んでしまいます
40×30cmの箱に20匹位入れていますが、多すぎてそれがいけないのでしょうか?
寄生などの知識はありますが、、、
生まれて3日くらいで家に回収しています。
さなぎになっても、黒くなってしまうのもあります
飼育環境は高温多湿、過密をを避け、清潔にするのが基本です。そうしないと、細菌やウィルスが繁殖して死ぬ幼虫が増えるでしょう。うちではビン刺しで育てているので、「40×30cmの箱に20匹位」が多すぎるかどうかはわかりません。
蛹が黒くなるというのは何でしょうね。脱皮の途中で死ぬのであれば、脱皮阻害剤のせいかもしれません。
ナミアゲハの蛹のわきに黒い穴があき、そこから蠅のような成虫がたくさん出てきました。幼虫ではなく、翅のある蟻のような虫です。他にも黒い穴がある蛹があります。おそらく、死んでいるでしょう。多くは幼虫から前蛹、蛹となり、無事飛び立つのですが、まれに孵らない蛹があります。孵らない蛹は色が濃いように思います。
コメントありがとうございます。それはおそらくアオムシコバチでしょう。うちではまだ遭遇したことがありません。翅があるのは困りますね。
こんにちは。
アゲハ蝶の蛹が2体食い破られてましてなんの寄生虫かと探していたところ、どうやら蛹の破られ方からアゲハヒメバチの様です。2体犠牲になってしまったのですが、未だに出て来たヒメバチが見つからず、恐怖しております……
それは大変ですね。アゲハヒメバチの実物はまだ見たことがありません。早く見つかるといいですね。