ジャコウアゲハの幼虫を育てようと思っていますか?「どうやって育てたらいいんだろう」「食べ物は何だろう」「毒はあるの?」「触っても大丈夫なの?」と思われているかもしれません。食べなければ大丈夫です。(笑)
うちのかみさんがジャコウアゲハの卵を採ってきて羽化させました。この記事では卵の採取、食草の準備から羽化までの飼育記録、成長過程、毒性などについて書きますので、参考になさってください。
この記事をご覧になり、食草の調達さえできれば、ジャコウアゲハの幼虫は難なく育てられるでしょう。
ジャコウアゲハの幼虫【育て方】
まずは、ジャコウアゲハ幼虫の育て方ですが、卵を採取したところから書きます。
ジャコウアゲハの卵採取
うちの近所で把握しているウマノスズクサ(ジャコウアゲハの食草)の自生地は1箇所だけ。友人宅がある団地の植え込みです。
そこに行ったちょうどその時、ジャコウアゲハが産卵に来ました。
千載一遇の出会い。
植え込みに散在するウマノスズクサに産んでいきましたので、
4つもらってきました。
大きさは直径1mmほど。
幼虫の食べ物(食草)の準備
卵が孵る前に幼虫の食べ物を準備しておかなければなりません。
まず、卵と一緒にウマノスズクサを一株もらってきて、鉢に植えました。
ウマノスズクサ育友会の記事 を参考にして、メネデール(植物活力素。液体肥料ではない)をやるようにしました。
ウマノスズクサはつる性多年草で、根が生きていれば冬季以外は何度も新芽を出します。
と言っても、鉢植えがうまく育つかどうかわかりませんし、育つとしても当分先なので、餌は自生地から採ってくるしかありません。
ジャコウアゲハの幼虫は餌が足りなくなると、共喰いするとのこと。餌は絶やさぬようご注意ください。
追記(2020/11/27):
ウマノスズクサが東京都の絶滅危惧種に指定されているとは知りませんでした。(記事末尾のコメント欄をご覧ください)。この時以降、ジャコウアゲハの幼虫とウマノスズクサの採取はしていません。と言っても、当地のウマノスズクサはただの雑草なので、周期的に刈り取られてしまいます。
幼虫孵化~飼育開始
取ってきた卵は4つとも孵化しました。
大きさは1~2mmほど。卵と同様にオレンジ色がかった茶系の幼虫。
ただ、餌は大量に準備できないため、この4匹は元の場所に戻し、代わりに産まれて間もない別の幼虫を1匹持ち帰りました。
我が家初となるジャコウアゲハの飼育が始まりました。
終齢幼虫になるまで
ジャコウアゲハの育て方は、他のアゲハチョウと何ら変わりません。飼育の基本的なことがわからない方は、こちらの記事をまずご覧ください。
ほかのアゲハチョウと同じように、ビン刺しで成長を見守ります。
7月7日12時12分 最初の脱皮。2齢幼虫に。
7月9日19時15分 2度目の脱皮。3齢幼虫に。
7月12日15時26分 3度目の脱皮。4齢幼虫に。
成長が速いですね。
よく食べます。
7月16日おそらく1時頃 4度目の脱皮。5齢幼虫に。2cmほどしかありません。
このあともりもり食べて、ぐんぐん成長。
約5cmまで成長。意外に大きくなりました。
蛹になるまで
蛹化に向けて一連の行動開始。
ガットパージ~ワンダリング
7月20日9時頃、ガットパージ(幼虫最後の排泄)。
多くのアゲハチョウと同様に水様便でした。但し、色は黒。ウマノスズクサは毒草だからか。(後述)
ワンダリング(蛹化の場所探し)開始。
ジャコウアゲハは壁で蛹化するイメージが強かったので、虫かごやダンボール箱に閉じ込めたのですが、なかなか決まらず。
やむなくビン刺しに戻したら、すぐに茎で定位。結局、放っておけばよかったということ。(^^;)
何しろ、初めての飼育なもんで。
糸掛け~脱皮
7月20日21時頃、蛹化の最終段階となる糸掛けと脱皮が始まりました。
その様子はこちらの記事でご覧ください。
成虫になるまで
8月1日早朝に羽化。
蛹化後、羽化までの様子はこちらの記事でご覧ください。
ジャコウアゲハの成長過程
成長過程各段階の期間は以下のとおり。
産卵~孵化 | 卵の期間 | 約5日 |
孵化~脱皮1回目 | 1齢幼虫の期間 | 約2日 |
脱皮1回目~2回目 | 2齢幼虫の期間 | 2日と約7時間 |
脱皮2回目~3回目 | 3齢幼虫の期間 | 2日と約20時間 |
脱皮3回目~4回目 | 4齢幼虫の期間 | 3日と約10時間 |
脱皮4回目~糸掛け | 5齢幼虫の期間 | 4日と約20時間 |
糸掛け~脱皮5回目 | 前蛹の期間 | 1日と約1時間 |
脱皮5回目~羽化 | 蛹の期間 | 10日と約4時間 |
孵化(7月5日)から羽化(8月1日)まで27日
こんなに速く成長するとは思いませんでした。
ジャコウアゲハの幼虫【豆知識】
ジャコウアゲハは珍しい
地域によっては、ジャコウアゲハは珍しいアゲハチョウです。理由は食草が、地域によっては絶滅危惧種とされるウマノスズクサに限られるから。(コメント欄参照)
前述のとおり、私の地元でもウマノスズクサは超希少種で、自生地は1箇所しか把握できていません。しかも、そこではただの雑草とみなされ、周期的に刈り取られるので、ジャコウアゲハの繁殖は難しい状態です。
近い将来、船堀界隈のジャコウアゲハは絶滅するかもしれません。
ジャコウアゲハは絶滅危惧種か
ジャコウアゲハは珍しい蝶ですが、絶滅危惧種なのでしょうか。
日本のレッドデータ検索システム はいまだに「保護されていない通信」扱いでアクセスできませんので、Perplexityの「公開された学術論文で検索」で尋ねてみました。
回答は以下のとおり。
ジャコウアゲハは現在、環境省レッドリストでは「準絶滅危惧」に指定されています。
分布と現状
ジャコウアゲハは本州、四国、九州に生息しており、特に西日本で個体数が多いとされています。 しかし、近年は生息地の減少や乱獲などにより、全国的に個体数が減少傾向にあります。
保護の取り組み
絶滅のおそれがある種として、各自治体でモニタリングや生息環境の保全が行われています。 また、一部の都道府県では狩猟の規制や飼育の許可制度を設けるなど、保護対策が講じられています。ジャコウアゲハは絶滅危惧ではありませんが、生息環境の保全と乱獲防止対策が重要視されている貴重な蝶種です。
これを見る限り、ジャコウアゲハは今のところ絶滅危惧種ではなく、準絶滅危惧種に指定されているようです。
ジャコウアゲハ幼虫の毒性
ジャコウアゲハは幼虫にも成虫にも毒があります。
幼虫時代にウマノスズクサにある毒素、アリストロキア酸を体内に蓄積するとのこと。そのせいか、寄生されることは比較的少なく、ジャコウアゲハを襲った天敵は、二度と襲わなくなるとか。
羨ましい。
触っても大丈夫ですが、食べてはいけません。成虫の腹部を食べた人は「激しい嘔吐、腹痛、全身に蕁麻疹、発熱などこの世のありとあらゆる苦痛」を経験したそうです。― 浜松科学館みらいーら「優雅に舞う毒蝶ジャコウアゲハの影響力」
ジャコウアゲハの幼虫【まとめ】
以上、ジャコウアゲハの幼虫についていろいろ書きました。
ポイントは以下のとおりです。
お役に立てば幸いです。
アゲハチョウに関する総括的な情報は、こちらの記事でご覧ください。
ジャコウアゲハはアゲハ界の異端。幼虫には多数の突起、終齢になっても黒いまま、共食いの危険。有毒。雄蝶はフェロモンが強く、名前の由来になっている麝香のような香りがします。
越冬して春に羽化した雄。
今回羽化した雄。このとおり成虫は美しく、魅力的です。
一度育ててみるのはいかがですか?
2020/8/2,2024/5/13
コメント
うちでもジャコウアゲハを育てています。全部で五匹以上は羽化していると思います。ジャコウアゲハ、絶滅危惧種ですが、もっと増えて欲しいですね。
そうですね。ウマノスズクサ育友会に頑張ってほしいところです。
2021年6月7日、近所で、人生初めてのジャコウアゲハの蛹を見つけ、小躍りしました。
その後、17日には、まだ羽化していませんでしたが、21日には既に羽化し、その辺一帯、ジャコウアゲハの乱舞。
蛹の期間は何日かなっと思い検索してみると、こちらに記事が掲載されていたので大変お勉強になりました。私はメスに惹かれましたが、美しいですね。ありがとうございました。
近所で「ジャコウアゲハの乱舞」とは羨ましい限り。恵まれていますね。
お役に立ててよかったです。
都内在住の方ですよね?
レッドリストに東京都はウマノスズクサが絶滅危惧種として登録されているのをご存知ですか?
http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06030421731
ウマノスズクサは現在では希少種のひとつです。
事前にちゃんとチェックされてから採取されるようにしましょう。
ご自宅で用意された食草で飼育しないと飼育の度に自生のものを掘り起こして採取されているとそこで育っているジャコウアゲハが絶滅してしまいますよ。
ご注意ください。
それは知りませんでした。
結局、ジャコウアゲハの飼育は1匹だけで終わりましたので、それ以降、ウマノスズクサの採取はしていません。
貴重な情報とご親切な忠告に感謝致します。
ありがとうございました。