越冬するかどうか、微妙な時期にアゲハチョウを飼育していますか?
幼虫が無事蛹化したものの、越冬型と非越冬型の見分け方がわからないでしょうか。
あるいは、寒い時期に羽化したら可哀想なので、できれば越冬させたいと思っているでしょうか。
この記事では次の質問の答えが得られます。
●どのようにアゲハチョウの越冬蛹を見分けることができるか。
●どうすればアゲハチョウを越冬させることができるか。
どうぞ参考になさってください。
念のため書いておきますが、アゲハチョウの卵、幼虫、成虫は越冬しません。
越冬するのは蛹だけです。
アゲハチョウ越冬の決定要因
アゲハチョウ越冬の決定要因は、日照時間と気温です。
日照時間
まずは、日照時間について考えてみましょう。
アゲハチョウは若齢幼虫時の日照時間が13時間30分を下回ると越冬する、というのがよく知られた通説です。
しかし、それは自然界での話。家飼いの個体には当てはまりません。
その点で参考になるデータとして、アゲハチョウの幼虫を幾つかのグループに分けて、それぞれ異なる時間光を当てる実験のレポートがありました。
こちらの記事をご覧になってみてください。

そこに書いてありますが、全く光を当てないと羽化する(越冬しない)個体もいます。
複雑ですね。
気温
次に気温ですが、日照時間のような明確な基準はわかりません。
ひとつ確実に言えることは、蛹が休眠状態になっていても、長時間暖かい場所にいると羽化するということ。
ツイッターやインスタグラムには、真冬でもアゲハチョウの羽化の写真や動画がアップされています。
外に置いていた鉢植えを部屋に入れたら、その木に付いていた蛹が羽化した、という話もありました。
結論
ということで、結論はこうなります。
●若齢幼虫時の日照時間が13時間30分を上回るなら越冬しない。
●若齢幼虫時の日照時間が13時間30分を下回り、気温が低ければ越冬する。
若齢幼虫時の日照時間が13時間30分を下回っていても、蛹を暖かい場所に長時間置いておくと、真冬でも羽化します。
アゲハチョウ越冬蛹の見分け方
アゲハチョウの越冬蛹は外見で見分けることができるのでしょうか。
結論から言うと、できる場合とできない場合があります。
なぜかと言うと、越冬蛹特有の色になる場合とならない場合があるからです。
越冬蛹特有の色
越冬蛹特有の色はこれです。
くっきりした濃い緑色
オレンジ色が混じった茶色
このような色になったら、越冬蛹とみなしてまず間違いないでしょう。
同系色の非越冬型と並べるので、見比べてみてください。
左が越冬型、右が非越冬型です。
越冬蛹の代表的な色に関しては、こちらの記事もご覧になってみてください。

通常の褐色
越冬蛹でも、このような通常の褐色になる場合もあります。
こうなったら、越冬型なのか非越冬型なのか、見分けがつきません。
我が家ではこれまでの経験上、蛹化してから3週間たっても羽化しなければ、越冬蛹になったと判断しています。(後述のデータ参照)
アゲハチョウの蛹の変色に関しては、こちらの記事を参考になさってください


アゲハチョウを越冬させる方法
家飼いのアゲハを越冬させたいのであれば、若齢幼虫時の短日処理(照明時間の制限)と越冬蛹の適切な管理が欠かせません。
我が家では以下のとおり行っています。
短日処理
9月以降に孵化した幼虫はダンボール箱に入れ、光が当たる時間は1日10時間程度に制限します。
光を当てない時間帯は薄日も入らないように、しっかり遮光します。
照明時間は徐々に短くしたほうがいいらしいのですが、そこまではやっていません。
越冬蛹の管理
越冬蛹はベランダの木に付いたままにしておくか、ダンボール箱に入れて蓋をして屋外に置きます。
外廊下に置いてあるダンボール組。
明るいと低温でも羽化してしまうケースがあるので、念のため蓋をしています。
こちらの記事をご覧になってみてください。

ダンボール箱に入れる蛹は、
このように蛹ポケットに入れるなどして、いつでも羽化できる状態にしておきます。
蛹ポケットの作り方に関しては、こちらの記事の後半をご覧ください。

寒さを経験しないと、春になっても羽化しないようです。
早春に羽化する可能性もあるため、時々覗いて蛹が色付いていないか様子を見ます。
我が家では一度だけ羽化したことに気づかずに、死なせてしまったことがありました。
こちらの記事をご覧になってみてください。

十分暖かくなってから羽化させるために、越冬蛹を冷蔵庫に保管する人もいます。
その方法に関しては、こちらの記事をご覧になってみてください。

参考データ(失敗談)
失敗談ですが、参考データとして過去の飼育記録を載せておきます。
3匹とも蛹化後2週間経っても羽化する気配がないので、てっきり越冬するものと思っていました。
いずれも遮光が甘かったようです。
当時の東京10月の平均気温は19.1度。
アオスジアゲハ
終齢幼虫になった日: 不明
前蛹になった日: 9月30日
蛹になった日: 10月1日
羽化した日: 10月19日
ナミアゲハ
終齢幼虫になった日: 10月1日
前蛹になった日: 10月7日
蛹になった日: 10月8日
羽化した日: 10月25日
もぬけの殻。ベランダに出していたら、外出中にいなくなっていました。
クロアゲハ
終齢幼虫になった日: 9月28日
前蛹になった日: 10月5日
蛹になった日: 10月6日
羽化した日: 10月26日
やはりクロアゲハは大きいせいか、羽化までの期間がナミアゲハ、アオスジアゲハより若干長くなります。
あとがき
以上、アゲハチョウ越冬の決定要因、越冬蛹の見分け方、越冬させる方法について書きました。
お役に立てば幸いです。
自然界なら越冬するのに、人間の介在で羽化してしまうなら、アゲハにとっては迷惑な話です。
なので、家飼いのアゲハもちゃんと越冬させたいと思いますが、前述のように羽化してしまう場合もあるでしょう。
その時は、家の中で寿命を全うできるようにしていただけると嬉しいです。
こちらの記事を参考になさってください。

2018/10/26,2021/3/2
コメント
早速のお返事いただきましてありがとうございました。
今朝はすこし冷え込みましたの確認いたしましたがつついても
角はでませんでした(笑)捕獲して家の中で育てても羽化したら
来年の春まで飼うのは難しい(猫がいます)ので
自然界のなかで自然に任せようかと…気になりつつ思っています
どうもありがとうございました。
はじめまして早速ですがクロアゲハの幼虫を見つけました
9月28日です
山椒の木に1匹。この時期に幼虫を見るのは初めてですが。。。
10月5日の時点で5センチくらいです。
しっかり食べていますが 前蛹から羽化まで約20日くらい
かかるとしたらこの時期(10月)羽化してと生きていけるか
心配です。日照時間と気温ですがここは愛知県比較的温暖ですが
日照時間は10時間くらいで気温は朝晩で寒暖の差があります。
何回も家の中で羽化させた経験はありますがクロアゲハは初めてで
どうしたらいいか思案してます。
日照時間が10時間であれば、越冬するでしょう。予想に反して羽化した場合ですが、屋外ではおそらく長生きできないので、家飼いで寿命を全うさせてあげたらどうでしょうか。
クロアゲハもナミアゲハと同じ飼い方で大丈夫です。細かい点に関しては「よくある質問」を参照なさってください。