アゲハチョウの越冬はいつ頃、何によって決まるんだろう。冬の越し方は? 越冬蛹の見分け方は? そんな疑問がありますか?
夏を過ぎてからアゲハチョウを飼う場合、一工夫しないと寒い時期に羽化してしまいます。我が家ではこれまで試行錯誤を繰り返し、確実に越冬させることができるようになりました。その知見に基づき、この記事では以下の質問に答えます。
- アゲハチョウの越冬はいつ頃何によって決まるのか。
- どうすればアゲハチョウを越冬させることができるか。
- アゲハチョウの越冬蛹はどこで見分けられるのか。
この答えがわかれば、アゲハチョウを確実に越冬させることができます。

念のため書いておきますが、卵、幼虫、成虫は越冬しません。越冬するのは蛹だけです。
アゲハチョウ越冬の決定要因
アゲハチョウ越冬の決定要因は、日長(日の出から日没までの時間)と気温です。
それぞれについて説明します。
要因1: 日長
アゲハチョウの越冬に関してはこのような通説があります。
若齢幼虫時の日長が13時間30分を下回ると越冬する。
若齢幼虫は1日の暗い時間が長くなると、冬が近いと判断して越冬の準備を始める、その閾値が13時間30分ということです。

賢い。
しかし、それは自然界での話。人工光が多い屋内で過ごす個体には当てはまりません。
その点で参考になるデータとして、アゲハチョウの幼虫を幾つかのグループに分けて、それぞれ異なる時間光を当てる実験のレポートがありました。
こちらの記事をご覧になってみてください。
そこに書いてありますが、全く光を当てないと羽化する(越冬しない)個体もいます。


複雑ですね。
家飼いのアゲハチョウを越冬させる方法については後述します。
要因2: 気温
次に気温ですが、日長のような明確な基準はわかりません。ひとつ確実に言えることは、蛹が休眠状態になっていても、長時間暖かい場所にいると羽化するということ。
SNS上には、真冬でも羽化した蝶の画像や動画がアップされています。外に置いていた鉢植えを部屋に入れたら、そこに付いていた蛹が羽化したという話もありました。


かわいそう。
通説に基づく結論
ということで、結論はこうなります。
- 若齢幼虫時の日長が13時間30分を上回るなら越冬しない。
- 若齢幼虫時の日長が13時間30分を下回り、気温が低ければ越冬する。
繰り返しになりますが、これは前述の通説に基づく自然界での話です。若齢幼虫時の日長が13時間30分を下回っていても、長時間暖かい場所にいると真冬でも羽化します。
日長が13時間30分を下回る境目は毎年変わります。概ね8月中旬から下旬ですが、正確な日付は 国立天文台暦計算室 で確認できます。
アゲハチョウ冬の越し方
ということで、家飼いのアゲハチョウを越冬させたいのであれば、若齢幼虫時の短日処理(照明時間の制限)と越冬蛹の適切な管理が欠かせません。
確実に越冬させるためには、1~3齢幼虫時に短日処理をするほうがいいでしょう。この点に関しては諸説あります。詳しくは アゲハ飼育日誌2213 をご覧ください。
我が家では以下のとおり行っています。
短日処理
概ね9月1日以降に孵化した幼虫はダンボール箱に入れ、光が当たる時間は1日10時間程度に制限します。




光を当てない時間帯は薄日も入らないように、しっかり遮光します。
越冬蛹の管理
越冬蛹はダンボール箱に入れて屋外の陽が当たらない涼しい場所に置きます。


外廊下に置いてあるダンボール箱。
保護のため不織布をかぶせています。明るい時間が長いと真冬でも羽化してしまうかもしれません。ご注意ください。( 飼育日誌2101 )
ダンボール箱に入れる蛹は、


このように蛹ポケットに入れるなどして、いつでも羽化できる状態にしておきます。蛹の剥がし方、蛹ポケットの作り方は こちらの動画 でご覧ください。
霧吹きで水をかける必要はありません。
早春に羽化する可能性もあるため、時々覗いて蛹が色付いていないかチェックします。
一度だけ羽化したことに気づかず、死なせてしまったことがありました。( 飼育日誌2006 )
蛹の休眠期間は決まっていませんが、蛹化後120日間は休眠し、残りの期間は気温によって変化するという説があります。
詳しくはこちらの記事でご覧ください。
十分暖かくなってから羽化させるために、越冬蛹を冷蔵庫に保管する人もいます。
方法はこちらの記事でご覧ください。
参考データ(失敗例)
失敗例ですが、参考データとして過去の飼育記録を載せておきます。
3匹とも蛹化後2週間経っても羽化する気配がないので、てっきり越冬するものと思っていました。いずれも遮光が甘かったようです。
当時の東京10月の平均気温は19.1度。
アオスジアゲハ


終齢幼虫になった日: 不明
前蛹になった日: 9月30日
蛹になった日: 10月1日
羽化した日: 10月19日
ナミアゲハ


終齢幼虫になった日: 10月1日
前蛹になった日: 10月7日
蛹になった日: 10月8日
羽化した日: 10月25日


画像はもぬけの殻。ベランダに出しておいたら、いなくなっていました。
クロアゲハ


終齢幼虫になった日: 9月28日
前蛹になった日: 10月5日
蛹になった日: 10月6日
羽化した日: 10月26日
アゲハチョウ越冬蛹の見分け方
アゲハチョウの越冬蛹は外見で見分けることができるのか。
結論を言うと、できる場合とできない場合があります。なぜかと言うと、越冬蛹特有の色になる場合とならない場合があるからです。
越冬蛹特有の色
越冬蛹特有の色はこれです。


くっきりした濃い緑色


オレンジ色が混じった茶色
このような色になったら、越冬蛹とみなしてまず間違いないでしょう。
同系色の非越冬型と並べるので、見比べてみてください。








左が越冬型、右が非越冬型。
越冬蛹の代表的な色に関しては、こちらの記事もご覧になってみてください。
通常の褐色
越冬蛹でも、このような通常の褐色になる場合もあります。


こうなったら、越冬型なのか非越冬型なのか、見分けがつきません。
我が家ではこれまでの経験上、蛹化してから3週間たっても羽化しなければ、越冬蛹になったと判断しています。(前述のデータ(失敗例)参照)
アゲハチョウの蛹の変色に関しては、こちらの記事を参考になさってください
アゲハチョウの越冬【まとめ】
以上、アゲハチョウ越冬の決定要因、冬の越し方、越冬蛹の見分け方について書きました。お役に立てば幸いです。
自然界なら越冬するのに、人間の介在で羽化してしまうなら、アゲハチョウにとっては迷惑な話。なので、ちゃんと越冬させたいところですが、前述のように羽化してしまう場合もあるでしょう。
その時は、家の中で寿命を全うできるようにしていただきたいと思います。こちらの記事を参考になさってください。
アゲハチョウに関する総括的な情報は、こちらの記事でご覧ください。
2018/10/26,2024/5/23
コメント
はじめまして。実は、12月25日にアゲハの幼虫を拾ってしまいまして。それ以来このブログにはお世話になりました。庭の山椒はとっくに散りつくしているし、なんでここにこの時期にコレが落ちているのかわからない感じでした。(翌日から寒波がくるという天気予報でしたし)北国というわけではない東京でもこのままにしていたら死んじゃうという感じでしたので、思わず拾ってしまいました。鳥が餌にしたのを落としてしまったのかな?とか思います。
ミニサイズ2㎝もあったでしょうか?終齢の幼虫であったという事もあり、無事に蛹になりました(12月31日)。
虫を飼った事は皆無なので全て手探りです。幼虫が死なない程度の寒さってどんな感じだろうか?とか(我が家はあまり暖房をつけないので寒いと言えば寒いのですが、かと言ってどの程度の暖かさまでがいいのか?とか。)
無事に蛹になってくれて一安心。ブログの画像を参考すると、越冬する蛹の様です。
それにしても、クリスマスまでアゲハが幼虫のままで存在する事にびっくりしたし、こんな事はふつうにあるのでしょうか。それとも温暖化の影響なのでしょうか?
春になるまで注意しながら、無事に蝶になったら外の世界を飛ばしてあげたいと思っています。
それは珍しいケースですね。普通にあることではありません。でも蛹になれたのであれば、もう大丈夫でしょう。
心温まるコメントをありがとうございました。
早速のお返事いただきましてありがとうございました。
今朝はすこし冷え込みましたの確認いたしましたがつついても
角はでませんでした(笑)捕獲して家の中で育てても羽化したら
来年の春まで飼うのは難しい(猫がいます)ので
自然界のなかで自然に任せようかと…気になりつつ思っています
どうもありがとうございました。
はじめまして早速ですがクロアゲハの幼虫を見つけました
9月28日です
山椒の木に1匹。この時期に幼虫を見るのは初めてですが。。。
10月5日の時点で5センチくらいです。
しっかり食べていますが 前蛹から羽化まで約20日くらい
かかるとしたらこの時期(10月)羽化してと生きていけるか
心配です。日照時間と気温ですがここは愛知県比較的温暖ですが
日照時間は10時間くらいで気温は朝晩で寒暖の差があります。
何回も家の中で羽化させた経験はありますがクロアゲハは初めてで
どうしたらいいか思案してます。
日照時間が10時間であれば、越冬するでしょう。予想に反して羽化した場合ですが、屋外ではおそらく長生きできないので、家飼いで寿命を全うさせてあげたらどうでしょうか。
クロアゲハもナミアゲハと同じ飼い方で大丈夫です。細かい点に関しては「よくある質問」を参照なさってください。