アオスジアゲハの幼虫を育てていますか? あるいは育ててみたいと思っていますか? 卵や幼虫はなかなか見つからないかもしれません。
我が家では毎年100匹ぐらい育てていますので、いろいろ学びました。この記事ではアオスジアゲハ幼虫の活動時期、食べ物、見つけ方、毒性、育て方などについて書きます。
この記事をご覧になれば、アオスジアゲハの幼虫に関する基本的なことがわかるだけでなく、他のアゲハチョウと違うところもわかります。かわいい画像、動画もあります。
- アオスジアゲハ幼虫の食べ物など基本情報
- アオスジアゲハの卵や幼虫の見つけ方
- 幼虫の育て方と他のアゲハチョウと異なる蛹化
- アオスジアゲハの成長過程と寿命
アオスジアゲハの幼虫【基本情報】
まず、アオスジアゲハの幼虫に関する基本的な情報を見ておきましょう。
アオスジアゲハの活動時期
アオスジアゲハ(学名: Graphium sarpedon)の活動時期は5~10月。その間、2~4回世代交代します。
分布域は東北南部以南。クスノキ(アオスジアゲハの食草)の街路樹が多い関東都市部に多く見られます。

幼虫の食べ物はクスノキ科植物
アオスジアゲハ幼虫の食べ物(食草)はクスノキ、タブノキ、シロダモ、ニッケイなどのクスノキ科植物です。
勘違いしている方が多いようですが、キャベツは食べません。
中でも圧倒的に多いのはクスノキでしょう。東京では街路樹に使われていることが多く、私が住んでいる江戸川区では”区の木”に指定されています。
我が家では外でクスノキの葉っぱを取ってきて、水を少し入れた袋に入れて冷蔵庫に保存しています。

あとは、自宅のベランダにあるクスノキの葉っぱ。

近所の歩道に生えていたひこばえの鉢植え。当初20cm程度だった木が、1年で40~50cmになりました。
ほかにも、種から育てたクスノキ。

クスノキは11月頃に黒っぽい実をつけます。それを拾ってきて、種を乾燥させないように保存し、翌年の春に蒔きます。
種の保存方法はこちらの記事でご覧ください。
クスノキの細かい点に関しては、こちらの記事が参考になります。

因みに我が家では、発芽率ほぼ100%でした。
クスノキは巨木になりますので、鉢植えの場合は時々根を剪定しなければなりません。
クスノキの苗木は通販で購入することもできます。
卵や幼虫の見つけ方
食草のクスノキ科植物は大木が多いので、見つけにくいと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

そういうコメントをいただいたことがあります。
狙い目は木の根元から出ているひこばえや、幹の低い位置から生えている若枝です。


幼虫は葉っぱの裏側にもいます。

蝶は新芽に好んで産卵します。

卵の大きさは直径1mmほど。
最初は薄い黄色。孵化が近づくと白くなります。
幼虫にも成虫にも毒性はない
アオスジアゲハは幼虫にも成虫にも毒性はありません。アゲハチョウで毒があるのはジャコウアゲハだけです。
ジャコウアゲハの毒は強烈です。詳しくはこちらの記事でご覧ください。
幼虫は寄生されやすい
アオスジアゲハの幼虫は他のアゲハチョウに比べ、寄生される確率が高いようです。
代表的な寄生虫はヤドリバエです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
幼虫のかわいい画像・動画
幼虫のかわいい画像と動画も載せておきます。

ナミアゲハやクロアゲハの幼虫は、大きくなると葉っぱを独占したがりますが、アオスジアゲハの幼虫はよくこうなっています。
糞を飛ばすのはおそらく自己防衛。天敵に見つからないようにするためと考えられます。
アオスジアゲハの幼虫【育て方】
アオスジアゲハの幼虫が羽化するまでの育て方と成長過程について。
基本は他のアゲハチョウと同じ
アオスジアゲハ幼虫の基本的な育て方は、他のアゲハチョウと同じです。
アゲハチョウの飼育全般に関しては、こちらの記事を参考になさってください。
アオスジアゲハの幼虫は蛹化が近くなると、

このように透き通るような黄緑色になり、しばらく動かなくなります。こうなったら、もう餌は食べません。

ほぼ糞を出し切った状態。
このあとの行動が、他のアゲハチョウと若干異なります。
蛹化時の行動は若干異なる
幼虫はほぼ糞を出し切ると、ワンダリング(蛹化の場所探し)を始めますが、他のアゲハチョウのように食草を離れて動き回ることはあまりありません。
但し、蛹化に適した角度の葉っぱがないと脱走しますので、ご注意ください。
ワンダリングの後、カラフルな糞をすることがあります。こちらの記事をご覧ください。

蛹になる場所が決まったら、糸掛けをして前蛹になります。

通常、蛹になる場所は食草の葉っぱの裏側。たまに、表側に張りつくこともあります。
糸掛け完了後、1~2日経って脱皮します。
脱皮の様子。画像の前蛹とは別の個体です。

蛹の特徴や羽化までの期間に関しては、こちらの記事をご覧ください。
【実録】幼虫の成長過程
育て方については以上ですが、参考として、うちで育てた幼虫の成長過程を載せておきます。
飼育環境: 東京都江戸川区内の住宅居室(室温は平均25度前後)
飼育期間: 5月15日から6月29日まで
孵化 卵~1齢幼虫
近所のクスノキで見つけた卵。

5月15日12時51分
孵化目前の模様。

同日17時58分
気がついたら孵化して、殻を食べ始めていました。
1~5齢幼虫
孵化後、順調に発育。

5月19日7時4分
最初の脱皮完了後。2齢幼虫に。

5月22日6時42分
2回目の脱皮完了後。3齢幼虫に。
お面だけが残っていました。

5月25日6時55分
3回目の脱皮完了直後。4齢幼虫に。

よく見ると、尾部右側の突起が無くなっていました。

問題ないの?

6月1日21時32分
気がついたら4回目の脱皮を終えて、5齢幼虫になっていました。
蛹化 5齢幼虫~前蛹~蛹
幼虫は蛹化が近くなると、透明感のある黄緑色になります。

6月15日14時29分
蛹になる場所を決めた5齢幼虫。
前回の脱皮からここまで約2週間。発育には個体差があるとはいえ、ちょっと長い気がします。

6月16日7時41分
糸掛けが済んで、前蛹になっていました。

6月16日22時22分
脱皮が済んで、蛹になっていました。
羽化 蛹~成虫
ようやく蛹が色づき始めました。

6月29日6時45分
羽化目前の蛹。
これは羽化の動画を撮れるかもしれないと思っていたら、

同日7時31分
目を離している隙に羽化。残念。

でも、無事に羽化して安堵。
ミッションコンプリート。
アオスジアゲハの寿命
今回追跡した個体各形体の大まかな日数は以下のとおりです。
孵化~脱皮1回目 | 1齢幼虫の期間 | 3日と約13時間 |
脱皮1回目~2回目 | 2齢幼虫の期間 | 2日と約23時間 |
脱皮2回目~3回目 | 3齢幼虫の期間 | 3日と約1時間 |
脱皮3回目~4回目 | 4齢幼虫の期間 | 7日と約12時間? |
脱皮4回目~糸掛け | 5齢幼虫の期間 | 14日と約4時間? |
糸掛け~脱皮5回目 | 前蛹の期間 | 1日? |
脱皮5回目~羽化 | 蛹の期間 | 12日と10時間 |
孵化(5月15日)から羽化(6月29日)まで45日。
プラス成虫の生存日数が今回観察した個体の寿命ということになります。
成虫の寿命は2週間程度。冬期室内なら1か月以上生きます。
という結果になりましたが、これは通常より長い気がします。
通常より長いのは4齢、5齢幼虫、蛹の期間。中でも5齢幼虫の14日超えは、初夏であることを加味しても異例の長さ。通常は1週間程度でしょう。
ただ、発育には個体差があり、飼育環境、栄養状態なども関係するので、今回のはレアケースとは断言できません。

なんだか、難しい。
追記(2022.7.24):
終齢幼虫の期間に関して、ツイッターで アンケート を取りました。1番多かった回答は「1週間前後」、次は「10日前後」。合わせると90%弱になります。
このデータを加味するとこうなりそうです。
35~40日前後 + 成虫の生存日数
繰り返しになりますが、発育には飼育環境や栄養状態などが関係するので、この日数は容易に変動します。
アオスジアゲハの幼虫【まとめ】
以上、アオスジアゲハの幼虫に関する基本的な情報と育て方などについて書きました。
ポイントは以下のとおりです。
お役に立てば幸いです。
アゲハチョウに関する総括的な情報は、こちらの記事でご覧ください。
アオスジアゲハの幼虫はずんぐりした形でかわいい、とぼけた表情。蛹は葉っぱの葉脈まで模倣する見事な擬態。成虫は殊のほか美しい色使い。なかなか味わい深いアゲハチョウです。
一度育ててみるのはいかがですか?
2018/8/11,2024/5/23
コメント